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1つ前の記事が思いの外長くなってしまったのでわけてみました。
というのも、友人の誕生日祝いに書いたものを上げようと思いまして。 いやー、彼女にはホントお世話になりっぱなしで、でもってこれからもお世話になる気満々なので、こんなもので報えるわけもないんですが、気持ちだけでも受け取っていただけたらと。 しかも友人の誕生日からもう1ヶ月近く経ってるっていうね! 遅くなって本当にすみません……。 一応陰陽官シリーズの設定ではあるんですが、それっぽいことは全くしておらず福ちゃんと新開さんが喋ってるだけのどうしようもない話です…。 「それで、何があったんだ?」 いただきますと手を合わせた後、スプーンを口に運ぶよりも前に新開は目の前にいる福富に向かって問い掛けた。 「む…、何故わかった」 「そりゃわかるさ。朝からそんな浮かない顔してりゃ」 鉄仮面と渾名される彼は一見すると表情筋が死んでいるようにしか見えないのだが、付き合いの長い新開はそんな福富の表情から感情を的確に読み取る術を会得している。 慣れれば結構わかりやすいんだけどなと新開はよく嘯いているが、賛同を得られることはほとんどなかった。 そして今朝顔を合わせたときから何やら落ち込んでいることに気付いた新開だったが、昼になっても浮かない顔をしたままであったため理由を聞き出すことにしたのだった。 「荒北から恋人ができたと言われて、その相手を紹介されたんだが……」 少しばかり躊躇いがちに福富の口から放たれた言葉は、新開を驚かせるには十分すぎて、思わずカレーライスを掬っていた手がぴたりと止まった。 ライス大盛りで頼んだところ、食堂のオバちゃんの好意によってカツも二割増しにサービスされたカツカレーには、荒北がいれば「ンなもん食ってるからデブんだよ!」と声を荒げるだろうし、東堂なら「脂質と糖質が多すぎる。もっとバランスを考えた食事をだな…」と小言を飛ばしてくるだろうが、そんな二人からの幻聴を「だって美味いんだよ」とあっさり聞き流して、福富が口を開こうか逡巡している間もばくばくとカレーを口に運んでいた、その手が止まった。 それほどの衝撃だった。 新開の同期であり同僚でもある荒北は、元々は本庁所属の陰陽官だが、福富の命で現在は全国各地の支部を転々としており、今は確か東京支局にいるはずだ。 口も目つきも悪い彼は、初対面の人間からは誤解されやすいが、実際は面倒見もよく仲間思いでもあるため、よく知った人間からするとその口の悪さすら魅力の一つに思えてくるものだ。 なので、こちらにいるときは恋人どころかそうなるかもしれない相手の気配すら感じさせなかった荒北だが、全国あちこちを巡るうちに彼の中身に魅かれた女性が現れ恋人となっても少しも不思議ではないのだが、あまりにも予期せぬ突然のことだったので新開としては納得するよりも先に呆然自失としてしまった。 同時に、寿一には恋人のことを報せておいて俺には一言もなしかよ靖友…と少々寂しく思ったが、荒北にとっての福富の存在の大きさと、彼自身の性格を考えれば致し方ないと思い直す。 しかしめでたい話のはずなのに、何故目の前の幼馴染みはこんなにも表情を曇らせているのだろうか。 「だが、その紹介された恋人というのが、荒北の地位と金しか見ていないような女でな…。俺としては何とか思いとどまってほしかったんだが、荒北があまりにも幸せそうだったものだから何も言えなかった」 「マジかよ靖友……」 「という夢を見たんだ」 福富の話を聞きながら、新開は自分の知っている荒北とは思えない彼の迂闊さにますます驚きを深めていたところで、最後に福富がとんでもなく重大な事を口にしたことに気付いた。 「……ん?夢?」 「ああ夢だ。目が覚めたときこれほど安心したことはなかった」 まさかの夢オチに、これを聞いていたのが隣の第二調査室に所属する生粋の浪速っ子である鳴子だったなら、「なんや夢かーい!!まぎらわしい真似せんといてや!」と盛大にツッコミを入れただろうが、あいにく今このテーブルにいるのは、大らかで少しばかり天然の入った新開と、そんな彼に輪を掛けて天然な福富であったため、二人の会話は何事もなかったかのように滞りなく続いていく。 「何だ夢か。あーよかった、碌でもない女に引っかかった靖友はいないんだな」 「うむ。だが夢には続きがあった。しばらくして荒北とその女が別れて俺はホッとしたんだが、それも束の間。今度は俺たちの父親ほどの年齢の男を恋人として連れてきたんだ」 「何だって……?」 「そいつはそいつで、荒北の陰陽官としての能力目当ての奴でな…。荒北で人体実験を目論んでいるような男だったんだが、アイツはそれに気付かず幸せそうにしていて…」 「どうしちまったんだよ、靖友…」 どうしちまったのはこの二人である。 ここに巻島さえ絡まなければ冷静極まる東堂がいたなら「二人ともしっかりしろ。それはただのフクの夢だ」と冷静にツッコミを入れてくれただろうし、勝手に当事者にされている荒北がいれば「お前ら俺のこと何だと思ってんのォ……」と呆れた視線を向けてくるだろうが、ここにいるのは少々天然な新開と以下略。 ツッコミを欠いた会話は更に斜め上の方向へと進み始める。 「幸い夢だったから良かったが、目が覚めてからふと思った。もし今後荒北から恋人を紹介された時に、その相手のことを素直に認められるのだろうかと」 「ふむ…。だがその心配は尤もだぜ寿一。変な相手に靖友を任せるわけにはいかないからな」 行儀悪くスプーンを咥えたまま、周囲からはバキュンポーズと呼ばれているポーズを取った新開に、福富は重々しく頷いた。 「当然だ」 リアリストを自称する巻島がこの会話を聞いていたなら、「お前らは年頃の娘を心配する父親かよ…」と引き気味にツッコミを入れてくれただろうが、残念ながらここにいるのは以下略。 「靖友はああ見えてけっこう繊細だからな。口の悪さに誤魔化されがちなそういった所に気付いたうえでしっかりと受け止めてくれるような相手じゃないとな」 「ああ。更にこの仕事に理解があり、不調を隠しがちな荒北に先回りして体調を気遣い、家計のやりくりも完璧といった、荒北のプライベートを支えてくれる存在で」 「でもって、料理が上手くて優しくて頭もよくないと」 「うむ。そして当然器量も気立てもいい必要があるな」 一見すると未来の恋人に夢見て理想を並び立てる女子中学生のようだが、実際の所は大切な娘の婿となる相手の品定めだ。 何もかも間違っているが、二人は至極真面目であり、彼らを止める人物もいない。 一通り荒北の恋人に求める条件を挙げたところで、ふと新開は福富が再び沈んだ表情をしていることに気付いて首を傾げた。 「どうした、寿一」 「いや、もし本当に荒北に恋人ができたらと考えたら少し寂しくなった」 「あー…だよなー。靖友の一番が俺らじゃなくなるって考えると寂しいよなー」 口ではなんのかんの言いつつも、仲間思いで世話を焼いてくれていた彼の最優先が恋人になるというのは、喜ばしいことではあるのだろうが寂しくもある。 特に恩人だからと無条件の信頼と献身を寄せられている福富はその思いも一入だろう。 そんな福富を慰めるべく新開は口を開く。 「まあもしそうなったとしても俺がいるからそれで我慢してくれ」 少し困ったように笑いながら告げた新開に、福富は思わぬことを言われたとばかりに目を瞬かせた。 「そういえばお前は恋人をつくる気はないのか?」 「うーん、しばらくはいいかな。今は仕事で手一杯だし。だから当分は寿一に寂しい思いはさせないぜ?」 「む、そうか。ならばよろしく頼む」 「おう、任せとけ」 福富が僅かに頬を緩めたことに気付いて、新開も満足げに笑うと、最後の一口となったカレーを口に含んだ。 腹も満たされ、幼馴染みの調子も戻ったようで、これで午後からも気分よく働けると上機嫌になった新開は、米粒一粒残さず平らげた皿を前にごちそうさまでしたと手を合わせたのだった。 この約一年後、福富の夢の通り二人は荒北から恋人を紹介されることになるのだが、その相手が同性であったことには驚いたものの、二人が挙げた条件を見事兼ね備えているうえ、福富も新開も一目置きその人となりを認めていたため、性別など些末な問題だと二人の仲を素直に認め心から祝福できる人物だったことに安堵することを、二人はもちろんまだ知らない。 ……ホントしょうもない話だな(白目) でもって俺で我慢してくれって言ってる新開さんに他意はなく、それに頷く福ちゃんにも他意はないっていう。ここ大事。 そしてもちろん付き合ってません。 いやだって友人が新福は付き合っていないって言うから……。 PR この記事にコメントする
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